恋多きオオクニヌシとスセリビメの嫉妬

八千矛の神(やちほこのかみ)オオクニヌシ

根の堅洲国から戻ったオオクニヌシはスサノオの娘スセリビメという正妻をつれて帰ってきました。しかし、ヤチホコノカミとも呼ばれたオオクニヌシには、すでにヤガミヒメという妻がいました。ヤガミヒメは正妻に遠慮して、子は残して稲羽の国に帰ってしまいました。

越の国のヌナカワヒメ

しかし、オオクニヌシは国づくりのために、美しい姫がいると聞くと、子孫繁栄のためと言って求婚に出かけます。高志の国(越の国、北陸地方)に美しいヌナカワヒメがいると聞いて、すぐに出かけました。彼女の家の前に来ると、オオクニヌシは(歌で)こう伝えました。

「私は、八千矛の神でオオクニヌシという。
大八島の国では妻を得られないので、こちらの国に参った。
まだ、旅支度も解かないまま、あなたの家の戸の前に立って戸を揺すぶったり、引いたりしている。
すると、山でヌエが鳴いて、野ではキジが鳴いて、庭の鶏も悲しく鳴きだした。
天に翔ける使いの鳥よ、このことを語って伝えよう」

ヌナカワヒメが(二つの歌で)答えます。

「私は、なよなよした女。私の心は入江の渚にいる鳥のように儚い。
いずれはあなたの鳥になりましょう。だから、命だけは取らないでください。
天に翔ける使いの鳥よ、このことを語ってお伝えします」

暗い夜がやってくると、あなたは朝日のような笑顔でやってきます。
私の腕や胸をそっと触れたり撫でたりした後、私の手を枕にしてお休みになられるでしょう。
だから、(今夜は)あまり焦って恋しいとおっしゃらないでくださいませ」

二人はこの夜には合わず、次の夜に会うことになります。二人は結ばれ、多くの子を授かります。

スセリビメ(出典:Pinterest)

スセリビメの嫉妬心

ある日、オオクニヌシが大和の国へ出かけようとしていると、スセリビメがあまりに悲しそうな顔をしています。オオクニヌシは片手を馬の鞍にかけ、片足を鐙(あぶみ)に入れて、彼女に(歌で)問うと、スセリヒメも(歌で)答えます。

愛しい妻よ、たくさんの仲間と私が出発すれば、あなたは泣かないと言うだろうが、あなたはきっと泣くだろう。朝の雨でたちこめる霧のように、ため息が出ることだろう」

八千矛の神オオクニヌシさま、あなたは男でいらっしゃるから、行かれる先々の港に若い妻がいらっしゃるのでしょう。しかし、私は女ですから、あなたの他に夫は、男はいません。
柔らかな布団の上で、若い胸や白い腕をそっと触れたり撫ぜたりして、玉のような手を枕にして、ゆっくりとお休みなさいませ。さあ、このお酒を召し上がってください」

二人は盃を交わし、愛する心の変わらないことを永遠に誓い、互いに手を首に掛け合って抱き合います。

『古事記』では、このような歌のやり取りを「神語り(かむがたり)」といいます。

スポンサーリンク
336-280




336-280




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
336-280